AEOの社内体制と外注範囲:外に出してよい作業と、出すと壊れる判断
AEO対策で問題になるのは作業量ではなく判断の量です。何を書かないかの決定、専門領域の定義、FAQの答えに入れる中身の3つは外注できません。逆に、外に出したほうが早く精度も出る作業もあります。1本2〜3時間という工数の実績値をもとに、最小限の体制と社内に残すべき判断を整理しました。
AEO対策で問題になるのは、作業量ではなく判断の量です。
記事を書くこと、構造化データを実装することは外注できます。外注できないのは、何を書かないかを決めることです。ここを外に出すと、一般論の記事が増えて、かえって専門領域の輪郭がぼやけます。
この記事では、外に出してよい作業と、社内に残すべき判断の線引きを、工数の実績値とともに整理します。
まず、工数の実態から
当社が自社の記事を改善したときの実測です。
| 作業 | 1本あたりの時間 |
|---|---|
| FAQ5問を考える | 大半 |
| リード文の書き直し | 30分程度 |
| メタディスクリプションの調整 | 10分程度 |
| 構造化データの実装 | 20分 |
| 合計 | 2〜3時間 |
注目すべきは、実装が20分しかかからないことです。 技術的な作業は全体のごく一部で、時間を使っているのは「何を書くか」を考える部分です。
ここを取り違えると、体制の設計を間違えます。エンジニアを確保しても解決しません。 必要なのは、自社の顧客が何を聞いてくるかを知っている人です。
そしてこの2〜3時間には、「どの記事を対象にするか」を決める時間が含まれていません。 選定は別枠で確保する必要があります。
外注できる作業
自社の実務を知らなくても成立する部分です。
- 記事の構成設計(見出しを問いの形にする、セクションを独立させる)
- 文章の執筆(材料が揃っていれば書ける)
- 構造化データの実装(JSON-LDの作成と貼り付け)
- リッチリザルトテストでの検証
- Search Consoleでの反映確認
- 進捗管理と、作業在庫の補充
- 測定基盤の設定(GA4のチャネルグループ、Bing Webmaster Toolsなど)
このあたりは、手順が決まっていれば誰がやっても同じ結果になります。むしろ外部のほうが早く、精度も安定します。
記事の構造の型はAIに引用される記事の型、GA4側の設定はGA4でAI検索の流入を計測する手順にまとめてあります。
外注できない3つの判断
ここを外に出すと壊れます。
1. 何を書かないかの決定
これが最も重要で、最も外注できません。
当社は、自社が扱っていない他社ツールを単体で紹介する記事を、途中で対象から外しました。流入はありましたが、強化するとAIに専門領域を誤認させるからです。
この判断ができるのは、自社が何で食べているかを知っている人だけです。外部の担当者に「流入の多い記事から改善してください」と依頼すると、当然この記事が上位に来ます。指標だけを見れば正しく、事業として間違っているという状態が生まれます。
2. 専門領域の定義
「この会社は何の会社なのか」を1文で言い切ることです。
AIは複数の情報源を突き合わせて会社の輪郭を作ります。その輪郭が曖昧だと、比較の候補にすら入りません。何を専門と名乗るかは経営判断であり、記事制作の下流で決まる話ではありません。
3. FAQの答えに入れる中身
FAQの質問は外部でも作れます。答えに入れる数値・手順・条件は作れません。
「導入期間はどれくらいですか」という質問に対して、「お客様の状況によって異なります」と書くのは誰にでもできます。「設計から運用開始まで3ヶ月前後で、内訳は要件整理に1ヶ月、選定に2〜4週間」と書けるのは、実際にやっている人だけです。
そして、引用されるのは後者だけです。 ここを外注に丸投げすると、実装は完璧なのに引用されない記事が量産されます。
最小限の体制
判断できる人が1人いれば始められます。
| 役割 | 誰が | 何をするか |
|---|---|---|
| 決める人 | 社内・1名 | 対象記事の選定、何を書かないかの決定、FAQの答えの確認 |
| 作る人 | 社内または外注 | 構成・執筆・実装・検証 |
| 回す人 | 社内または外注 | 指示書の作成、進捗管理、作業在庫の補充 |
「決める人」を兼任させないでください。 この役割は判断が中心で、作業に入ると判断が止まります。実務では、週に2〜3時間を確保できれば回ります。
逆に、決める人がいないまま作業者だけを増やすと、判断待ちの記事が溜まって全体が止まります。
作業を止めないための運用
当社は、1記事ごとに指示書を作り、常に5件を手元に置く形にしました。
指示書に入れるのは次の5つです。
- リード文の案(結論を先に置く形に書き直したもの)
- メタディスクリプションの案(140〜160字)
- FAQ5問(質問と答えの全文)
- 構造化データのJSON-LD(そのまま貼れる完成形)
- 実装手順(どの画面のどこに何を貼るか)
「FAQを追加してください」ではなく、FAQの本文そのものを渡します。 作業者が判断する余地を残さないところまで書き切るのが要点です。ここを曖昧にすると、作業が止まるか、品質がばらつきます。
5件という数字には理由があります。 1件ずつ渡すと、レビューの往復のたびに作業者の手が空きます。一度に30件渡すと、方針変更のたびに作り直しになります。5件前後が、止まらず、かつ無駄にならない量でした。
よくある失敗
1. エンジニアに任せて終わりにする
実装は20分です。技術的な問題として扱うと、時間を使うべき場所に人が配置されません。
2. 記事の本数を目標にする
「月10本」を目標に置くと、答えを薄めて数を作る方向に働きます。引用されない記事を10本作っても、専門領域はぼやけるだけです。
3. 効果が出る前に体制を縮小する
AEOには数値が動かない期間が構造的にあります。着手から4〜9ヶ月目のあたりです。この時期に体制を縮小すると、回収が始まる前に降りることになります。 詳しくはAEO対策の効果は4〜9ヶ月目に谷が来るで扱っています。
4. 決める人を置かずに外注する
支援会社に依頼する場合も同じです。診断・設計・指示書・実装・測定基盤の構築は外部のほうが早く進みますが、自社の専門領域と、FAQの答えの中身だけは社内でしか決められません。
まとめ
AEO対策の体制で確保すべきは、作業者ではなく決める人1人です。この人が、対象記事の選定、何を書かないかの決定、FAQの答えの確認を担います。週に2〜3時間で回ります。
外注してよいのは、構成・執筆・実装・検証・進捗管理・測定基盤の設定です。外注できないのは、書かない判断、専門領域の定義、そしてFAQの答えに入れる具体的な中身です。
工数は1本あたり2〜3時間で、実装は20分。残りはすべて「何を書くか」を考える時間だと見積もってください。
トライエッジでは、診断から指示書の作成、実装、測定基盤の構築までを支援しています。詳しくはAEO(AI検索最適化)支援をご覧ください。現状の把握は無料AEO診断から始められます。ご相談はお問い合わせより承ります。
FAQよくあるご質問
Q. AEO対策は何人でできますか?
判断できる人が1人いれば始められます。この1人が決めるのは、どの記事から着手するか、何を書かないか、FAQの答えに何を書くかの3点です。記事の執筆や構造化データの実装は外注や分担が可能なため、人数より「決める人が確保されているか」が条件になります。逆に、決める人がいないまま作業者だけを増やすと、判断待ちで止まります。
Q. 外注できる作業とできない作業の境目はどこですか?
境目は「自社の実務を知らないと書けないかどうか」です。記事の構成、文章の執筆、JSON-LDの実装、リッチリザルトテストでの検証、進捗の管理は外注できます。外注できないのは、自社が扱わない領域を対象から外す判断、専門領域の定義、そしてFAQの答えに入れる具体的な数値・手順・条件です。ここを外に出すと、一般論の記事になり引用されません。
Q. 1記事あたりどれくらいの工数を見ておけばよいですか?
2〜3時間が目安です。内訳は、FAQ5問を考える時間が大半で、構造化データの実装作業そのものは20分程度です。工数を実装時間で見積もると必ず足りなくなります。また、この2〜3時間の中には「何を書かないか」を決める時間が含まれていないため、対象記事の選定は別枠で確保してください。
Q. 作業が途中で止まるのはなぜですか?
手元の作業在庫が切れるからです。1件ずつ渡す運用にすると、レビューの往復のたびに作業者の手が空きます。当社では1記事ごとに指示書を作り、常に5件を手元に置く形にしました。逆に一度に30件渡すと、方針変更のたびに作り直しが発生します。5件前後が、止まらず、かつ無駄にならない量でした。
Q. 支援会社に依頼する場合、何を任せるべきですか?
現状の診断、優先順位の設計、指示書の作成、実装、そして測定基盤の構築です。この範囲は外部のほうが早く、精度も出ます。一方で、自社の専門領域の定義と、FAQの答えに入れる実務上の判断は、外部だけでは決められません。依頼する場合も、社内で決める人を1人立てることが前提になります。
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出典・執筆:株式会社トライエッジ/中野 三四郎(代表取締役CEO)。 2026年8月28日公開。