SFA / CRM基礎講座②:顧客のポテンシャルの考え方と収集方法
優良顧客を見分ける基準は、その顧客が使える予算の大きさ=ポテンシャルです。BtoCは会員カード作成時のアンケート、BtoBは直接ヒアリングか売上高・従業員数・資本金からの推測で集めます。集めた情報は上位10%を重要顧客、続く30%を準重要顧客、残る60%を一般顧客とする3区分から始めます。
優良顧客を見分ける最も重要な基準は、その顧客が自社に使える予算の大きさです。 SFA / CRMの世界では、これを「ポテンシャルの高さ」と呼びます。
集め方は取引形態で分かれます。BtoCなら会員カード作成時のアンケート、BtoBなら営業時の直接ヒアリング、もしくは公開されている売上高・従業員数・資本金からの推測です。
集めたあとは、上位10%を「重要顧客」、続く30%を「準重要顧客」、残る60%を「一般顧客」とする3区分から運用を始めます。
この記事では、ポテンシャルという考え方、BtoC / BtoBそれぞれの収集方法、そして顧客の区分の仕方までを順に解説します。

SFA / CRM基礎講座①:導入の目的は優良顧客の発掘と育成
ポテンシャルとは、何を指す言葉ですか
顧客が自社の商品・サービスに使うことができる予算の大きさのことです。
SFA / CRM導入の目的は「優良顧客の発掘と育成」にありますが、そこで重要になるのが優良顧客の定義方法です。その判別要素として挙げられるのが予算の大きさであり、SFA / CRMの世界ではこれを「ポテンシャルの高さ」と呼びます。ポテンシャルを日本語訳すると「可能性」「潜在的な力」といった意味になり、この場合は顧客が使うことができる予算の大きさということになります。
ポテンシャルの考え方ですが、自社が提供している商品やサービスに対して、ギリギリ最大限払うとしたらいくらまで使えるのか、と置き換えて考えるとわかりやすいかもしれません。
導入の目的そのものは基礎講座①:導入の目的は優良顧客の発掘と育成で解説しています。
同じ金額を使った2人の顧客は、同じ重要度ですか
違います。 例で考えてみましょう。
ここに2人のサラリーマンがいたとします。名前をAさんとBさんとしましょう。このAさんとBさんは、それぞれ同じ飲食店で5,000円の食事をしたとします。
食事をしてくれた飲食店にとってみれば、何も情報がなければAさんもBさんも顧客として区別はできません。どちらも同じお客様ということになります。
しかし、Aさんは一ヶ月間で外食に自由に使えるお金が10万円、一方のBさんは1万円しか外食に使えないとしたらどうでしょうか。
- Aさん:1ヵ月に10万円使えるため、最大で20回このお店に来る可能性がある
- Bさん:1ヶ月の外食予算が1万円のため、同じ月内であればあと1回しか来られない
Aさんはお店のことを気にいってくれれば、足しげく通ってくれる常連さんになってくれるかもしれません。一方でBさんは、毎日のように足繁く通うのは予算上ちょっと厳しいと言わざるを得ません。
したがって、この飲食店にとってAさんとBさんを比べた場合にポテンシャルの高い顧客は、Aさんということになります。Bさんにもまた来店してもらえればありがたいですが、Aさんに常連になってもらったほうが、お店の収益としてはより大きくなる可能性が高いと言えるでしょう。
お店で何らかのキャンペーンを企画してダイレクトメールなどを送りたい場合には、Aさんには必ず送り、Bさんに対してはダイレクトメールの予算が余った場合のみに送るなどすれば、より効率的に営業・販売活動を行うことができます。
BtoCビジネスでは、ポテンシャルをどう集めればよいですか
会員化・データベース化を通じて、アンケートで間接的に聞き出します。
BtoCビジネスの場合、顧客のポテンシャルを直接ヒアリングして具体的に把握することは容易ではありません。来店する顧客一人ひとりに
「あなたが1ヶ月間で外食に使えるお金はいくらですか」
と聞ければ良いですが、現実的には難しいでしょうし、仮に聞けたとしても正直に答えてくれるかはわかりません。
そこで重要なのが会員化・データベース化になります。飲食店に行くと、利用料の一部をポイントなどで還元する会員カードを作ることがあるかと思いますが、そういったカードを作る際に顧客にポテンシャルを把握するための質問をするのが良い方法です。
たとえば、会員カードを作成する際にアンケートを準備しておき、その中に次のような質問を入れておきます。
- あなたが外食をする頻度は週に何回ですか?
- 一回にどのくらいの飲食費を使いますか?
これらの回答結果をSFA / CRMに蓄積しておけば、それぞれの顧客の外食に対する予算をある程度推測できますから、普段から外食にお金を使っている人、つまりポテンシャルが高い顧客が誰なのかを見極めることが可能となります。会員登録の際にメールアドレスなどを聞いておけば、メールマガジンなどで後々ヒアリングすることもできるでしょう。
仮に1週間に外食する頻度が4回以上の人を「重要顧客」と定義し、その重要顧客に対して重点的にお店からの案内を送るなどすれば、お店の会員全員に対してプロモーションを行うよりも、より効率的に顧客を獲得することができるはずです。
BtoBビジネスでは、ポテンシャルをどう集めればよいですか
直接ヒアリングが基本で、公開情報からの推測で補います。
BtoBビジネスの場合、まずやるべきは営業活動の際に直接ヒアリングすることです。聞き方はいろいろありますが、「御社のこの事業に使える年間予算はおいくらですか」といった形で聞けば、必要な情報を収集できます。
また、BtoBビジネスだと、ヒアリングしなくてもある程度推測するという方法も取ることができます。企業によっては「売上高」「従業員数」「資本金」などを公開しており、商品やサービスの内容によっては、これらの情報がポテンシャル情報とほぼイコールになる場合も少なくありません。こういった場合は、直接ヒアリングする機会がなかったとしても、外部情報だけでポテンシャルを把握することができます。
BtoBでは、こうしたヒアリング内容や企業情報をSFA / CRMのどの項目に持たせるかを最初に決めておくと、あとから集計しやすくなります。CRM導入の流れでは、この項目設計を含む導入プロジェクトの進め方を扱っています。
集めたポテンシャル情報は、どう区分すればよいですか
上位10%・続く30%・残り60%の3区分から始めます。
ポテンシャルの高さを収集したら、次に行うことは顧客をポテンシャルの高さによって区分けすることです。顧客を
- 重要顧客
- 一般顧客
などに区分けします。

区分の仕方としておすすめなのは3つの区分に分ける方法です。たとえば上位10%を「重要顧客」とし、続く30%を「準重要顧客」・残りの60%を「一般顧客」などにします。
上位に行くほど割合が少なくなり、下位に行くほど大きくなるようないわゆる「ピラミッド型」にすることによって、営業・販売チームが重点的に力をいれやすくなります。
顧客の区分をもう少し細かくしたい場合もあるかと思いますが、ゼロベースで始める場合は、まずは3つ程度に収めてシンプルに運用をスタートし、分析をすすめる中でより細かくしていくことがおすすめです。
ポテンシャルだけで、営業対象を決めてよいですか
足りません。 ポテンシャルは「顧客がいくら使えるか」しか表さないためです。
予算が大きい顧客でも、すでにその大半を自社に使ってくれている場合は、これ以上の伸びしろがありません。逆に予算の一部しか押さえていない顧客には、残りの部分が丸ごと攻略余地として残っています。
この「顧客の予算のうち自社がどれだけ占めているか」を表すのがシェアオブウォレットという指標で、基礎講座③:シェアオブウォレットの概念とマーケティング施策で解説しています。ポテンシャルとシェアオブウォレットの2軸で顧客を4カテゴリーに分けると、それぞれに打つべき施策が決まります。
まとめ
顧客のポテンシャル(=使える予算の大きさ)を計測してSFA / CRMに蓄積することは、幅広い顧客の中から注力すべき層を明確にする上で非常に重要です。一方で、日々の営業活動・販売活動の中で、ポテンシャルに関する情報を継続して収集していくことが求められます。
まずはBtoCならアンケート項目、BtoBならヒアリング項目を1つ決めて、次の商談・次の会員登録から集め始めてください。集まったら上位10%・30%・60%の3区分に当てはめるだけで、注力先が見えます。
実際に自社の顧客がどう分布しているかを数字で確かめるには、基礎講座④:デシル分析や基礎講座⑤:RFM分析が使えます。
ポテンシャル情報を蓄積する環境を整えたい方へ
トライエッジでは、Zoho CRMの初期設計・運用後の支援サービスを提供しています。CRM導入の支援内容はCRM導入支援、Zoho CRMについてはZoho CRM導入支援をご覧ください。ご相談はお問い合わせより承ります。
FAQよくあるご質問
Q. ポテンシャルとは何を指しますか。
顧客が自社の商品・サービスに使うことができる予算の大きさを指します。日本語では「可能性」「潜在的な力」といった意味で、自社の商品に対してギリギリ最大限払うとしたらいくらまで使えるか、と置き換えると考えやすくなります。同じ5,000円の食事をした2人でも、外食に月10万円使える人と月1万円しか使えない人では、その先に見込める取引額がまったく違います。
Q. BtoCで顧客のポテンシャルを集めるには、どうすればよいですか。
会員化・データベース化が基本です。来店客一人ひとりに「1ヶ月で外食に使えるお金はいくらですか」と直接聞くのは現実的ではないため、ポイント還元などの会員カードを作る際にアンケートを用意し、「外食をする頻度は週に何回ですか」「一回にどのくらいの飲食費を使いますか」といった質問を入れます。回答をSFA / CRMに蓄積すれば、各顧客の予算を推測できます。
Q. BtoBで顧客のポテンシャルを集めるには、どうすればよいですか。
まずやるべきは営業活動の際の直接ヒアリングで、「御社のこの事業に使える年間予算はおいくらですか」といった聞き方をします。加えて、ヒアリングの機会がなくても推測できる方法があります。企業によっては「売上高」「従業員数」「資本金」を公開しており、商品やサービスの内容によっては、これらの外部情報がポテンシャルとほぼイコールになる場合も少なくありません。
Q. 集めたポテンシャル情報は、どう区分すればよいですか。
3区分から始めるのがおすすめです。たとえば上位10%を「重要顧客」、続く30%を「準重要顧客」、残りの60%を「一般顧客」とします。上位ほど割合が少なく下位ほど大きくなるピラミッド型にすると、営業・販売チームが重点的に力を入れやすくなります。ゼロベースで始める場合はまず3つ程度に収めてシンプルに運用を開始し、分析を進める中で細かくしていってください。
Q. ポテンシャルがわかると、営業活動はどう変わりますか。
使うリソースの配分順が変わります。飲食店の例では、外食予算が月10万円のAさんは1回5,000円の来店なら月20回まで可能性がありますが、月1万円のBさんは同じ月内にあと1回が限界です。キャンペーンのダイレクトメールを送るなら、Aさんには必ず送り、Bさんには予算が余った場合のみ送る、といった判断ができます。BtoCなら「週4回以上外食する人を重要顧客とする」のように条件を決めておきます。
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出典・執筆:株式会社トライエッジ/森本 貴行(CRM/営業戦略)。 2024年4月8日公開/2026年8月14日更新。