顧客情報の一元管理:システム選定と、集めたデータの3つの使い道
顧客情報の一元管理は、集めた時点では成果になりません。ターゲットマーケティング、アップセルとクロスセル、顧客フィードバックという3つの使い道を先に決めることが条件です。どこまでを顧客として扱うか、システム選定の3つの視点、小規模から広げる導入の進め方、活用の具体策まで解説します。
顧客情報を一元管理しても、集めた時点では成果になりません。使い道を先に決めていることが条件です。
使い道は大きく3つあります。ターゲットマーケティング、アップセルとクロスセル、顧客フィードバックの活用です。 この3つのどれに使うかが決まっていないシステムは、いずれ入力されなくなります。
この記事では、どこまでを顧客として管理するのか、システムをどう選ぶのか、どう導入するのか、そして集めたデータをどう使うのかを順に説明します。
どこまでを「顧客」として管理するのか
こんにちは。トライエッジ代表の中野です。みなさまは顧客情報をどのように管理していますか。
ビジネスを行うと、様々な「顧客」に遭遇します。「顧客」とは自社のサービスを使ってくれた「取引顧客」だけではありません。 「自社サービスの資料を請求した」「自社主催のイベントに参加してくれた」といった「現在取引していないが、今後取引する可能性がある相手」も「顧客」として取り扱います。
こういった相手を「見込み顧客」「未取引顧客」と呼ぶこともあります。このように顧客にはさまざまな形態がありますが、その情報をどのように管理しているでしょうか。
「取引している顧客は管理しているが、取引をしていない顧客は情報が分散している」**「取引していない顧客についてはそもそも管理していない」**こういった声をよく聞きます。
「顧客情報」は会社に蓄積されていく財産です。江戸時代の商人は火事が起こったときに、顧客台帳を井戸に投げ込んでから逃げたという話もあります。そのくらい顧客情報は昔からビジネスの基本です。情報があったとしても、バラバラに管理していては意味がありません。

執筆者
株式会社トライエッジ代表 中野三四郎
なぜ「顧客情報の一元管理」が必要か
顧客情報の一元管理は、現代のビジネスにおいて必要不可欠な要素です。ポイントは3点です。
効果的な意思決定ができる
経営上、**意思決定を行う際に必要なのは「顧客の情報」**です。自社の顧客はどのような業種が多いのか、どういった企業規模なのかを把握することは、意思決定の非常に重要なプロセスになります。
顧客情報を一元管理することで、経営者などの意思決定者はリアルタイムで正確な顧客データにアクセスでき、これを基にした意思決定が可能となります。顧客データ無しの意思決定は、目を閉じたままボールを投げるようなものだと思ってください。
業務効率が向上する
顧客データが一元的に管理統合されることで、情報の検索や更新が簡単になります。
実業務に関わっているメンバーは正確な顧客情報を把握する必要がありますが、これらの情報が様々な形態で保存されていると、集約するのに時間がかかります。この時間を短縮させ、業務を効率化させるためにも一元管理は非常に重要です。
パーソナライズされたサービスを提供できる
一元管理により、顧客の属性や取引履歴を把握することが容易になります。統合的に分析を行えば、顧客の購買傾向などの理解が深まり、より効率的なマーケティングを実施できます。
逆に言えば、自社と相性が悪い顧客群も把握でき、無駄なマーケティング費用を削減する効果もあります。 結果として顧客満足度の向上や営業効率の向上を見込めます。
システムはどう選ぶのか
一元管理を行うにあたっては、管理するためのシステム(CRM)を適切に選ぶことが重要です。選定のポイントは3つです。
解決したい課題と導入目的を明確にする
まず、やりたいこと・解決したい課題を明確にしましょう。どういった情報を管理すべきなのか、その情報を使って何をしたいのかがはっきりしないケースがよくありますが、これらが不明確だと、何のためにシステムを入れるのか、入れたあとどうするのかがぶれてしまい、結果として誰にも使われないシステム導入になります。大変重要なポイントです。
拡張性を見る
顧客データの統合は、「短期的な視点」と「長期的な視点」が必要です。いつまでに、最終的にどういった状態に持っていきたいのかを明確にしましょう。これを明確にすれば、初期に使うべき機能と、最終的にどういった機能を拡張していくべきかが分かりやすくなります。
短期的な視点だけでなく、最低でも3年程度の長期的な視点を持ちましょう。
事例を確認する
既に導入している企業や同業他社の事例を参考にし、実際の使用感や効果を把握することも重要です。可能であれば実際に使っているユーザーの声を聞いてみてください。
どのツールで管理するか(Excel・クラウドの表計算・CRM)の比較は顧客情報の管理方法3つの比較、製品ごとの料金と機能はZoho CRMの料金と機能で扱っています。
導入はどう進めるのか
システム導入を成功させるためのコツのうち、重要なポイントに絞って説明します。
計画を策定する
導入プロセスを具体的かつ計画的に進めるために、プロジェクト計画を策定します。これにはプロジェクトの意義・解決したい課題・スケジュール・予算確保が含まれます。
関係者の合意を形成する
導入に関わる関係者全員との密なコミュニケーションを図り、全体が進捗を理解し、協力できるようにしましょう。システム部門やマーケティング部門だけが独自に進めるのではなく、経営陣・営業現場などをしっかりと巻き込んで進めることが重要です。
小規模から始める
導入にあたっては、一部の部門などで小さな規模で行い、問題点を洗い出す方式が有効です。いきなり全社的に行うと、合意形成や導入の作業が膨大となり、プロジェクトが頓挫しがちです。部分的に導入を行って成功を収めてから徐々に広げていくのが成功の鍵です。
手順ごとの期間の目安はCRM導入の流れ:7つの手順と、実際に止まる2つの工程にまとめています。
集めたデータをどう使うのか
一元管理された顧客データは、活用しなければ意味がありません。 代表的な使い道を3つ挙げます。
ターゲットマーケティングを実施する
一元管理されたデータを基に、特定の属性や顧客にターゲットを絞ったマーケティングを展開します。顧客データを活用する最もベーシックな方法です。
当たり前のようですが、顧客を属性ごとに区分けしてマーケティングを継続的に行うことは簡単ではありません。属性を3つに分ければ、顧客とのコミュニケーションの仕方が単純に3倍になるからです。 分け方は、実行できる数に絞ってください。
アップセリングとクロスセリングを実施する
アップセリングは取引顧客により高単価のサービスを販売していくこと、クロスセリングは取引顧客に対して自社の別サービスを販売していくことを指します。
顧客の基本情報や購買履歴を分析し、過去の傾向からアップセリング・クロスセリングに適した顧客や、今後可能性が高い顧客を洗い出します。洗い出した顧客に個別で提案することで、顧客単価を上げていくことができます。具体的な進め方はBtoBビジネスにおけるアップセル・クロスセルを徹底解説で扱っています。
顧客フィードバックを活用する
顧客の一元管理ができれば、顧客からのフィードバックも一元的に管理でき、マーケティングやセールスチームに実際の顧客の声を届けられます。これらの情報を活かせば、自社サービスや商品の品質向上に役立てられます。
実際にやりきれている会社は多くない
顧客の管理は、「言うは易く行うは難し」という言葉がぴったりで、実際にやりきれている会社は多くありません。
**HubSpot Japanの調査**でも、30%以上の企業が顧客の管理方法が明確ではない、わからないという結果が出ました。

この数字が示しているのは、一元管理が難しいのはツールの問題ではないということです。 管理方法が明確でない状態のままツールを入れても、明確でない運用がそのまま移るだけです。先に「どこまでを顧客とし、その情報で何を判断するか」を決める必要があります。
まとめ
顧客情報の一元管理は、取引顧客だけでなく、資料請求者やイベント参加者まで含めて行うものです。必要性は、意思決定・業務効率・パーソナライズの3点にあります。
システム選定では、目的の明確化、3年程度の長期視点での拡張性、事例の確認の3つを見ます。導入は小規模から始め、成功してから広げてください。
そして最も重要なのは、集めたデータの使い道を先に決めることです。ターゲットマーケティング、アップセルとクロスセル、顧客フィードバックの3つのどれに使うかが決まっていないシステムは、いずれ入力されなくなります。
適切なシステムの選定と導入、そしてデータの活用を通じて、効率化された業務プロセスと顧客満足度向上を実現できます。トライエッジの支援内容はCRM構築・運用、ご相談はお問い合わせより承ります。

執筆者 株式会社トライエッジ代表 中野三四郎
人材派遣会社に新卒入社後、一貫してマーケティング部門に従事。営業戦略の立案、SFA/CRMの企画開発・運用、顧客分析などを行う。その後、M&Aコンサルファームやメーカーの営業企画などを経て、株式会社トライエッジを設立。【著書】「営業は仕組みで9割決まる」

FAQよくあるご質問
Q. 顧客情報の一元管理はなぜ必要ですか?
3点あります。1つ目は効果的な意思決定で、自社の顧客がどの業種に多く、どの企業規模なのかを把握できると経営判断の材料になります。2つ目は業務効率の向上で、情報の検索や更新が簡単になり、集約にかかる時間が減ります。3つ目はパーソナライズされたサービス提供で、属性や取引履歴の分析から購買傾向が見え、相性の悪い顧客群も把握できるため無駄なマーケティング費用を削減できます。
Q. どこまでを顧客として管理すべきですか?
自社のサービスを使ってくれた取引顧客だけではありません。自社サービスの資料を請求した、自社主催のイベントに参加してくれたといった、現在取引していないが今後取引する可能性がある相手も顧客として扱います。見込み顧客や未取引顧客と呼ばれる層です。取引している顧客は管理しているが取引していない顧客の情報が分散している、という状態は非常によく見られます。
Q. CRMを選ぶときのポイントは何ですか?
3つです。1つ目は解決したい課題と導入目的の明確化で、どういった情報を管理し、その情報で何をしたいのかを先に決めます。2つ目は拡張性で、最低でも3年程度の長期的な視点を持ち、初期に使う機能と将来拡張する機能を分けて考えます。3つ目は事例の確認で、可能であれば実際に使っているユーザーの声を聞いてください。
Q. 全社一斉に導入すべきですか?
一部の部門など小さな規模から始めて、問題点を洗い出す方式が有効です。いきなり全社で行うと合意形成と導入の作業が膨大になり、プロジェクトが頓挫しがちです。部分的に導入して成功を収めてから徐々に広げてください。あわせて、システム部門やマーケティング部門だけで進めず、経営陣と営業現場を巻き込むことが重要です。
Q. 一元管理した顧客データは何に使えますか?
代表的なのは3つです。1つ目はターゲットマーケティングで、特定の属性に絞った施策を展開します。2つ目はアップセリングとクロスセリングで、購買履歴から高単価サービスや別サービスの提案先を洗い出します。3つ目は顧客フィードバックの活用で、集めた声をマーケティングやセールス、商品の品質向上に回します。ただし属性を3つに分ければコミュニケーションの手間は単純に3倍になるため、分け方は絞ってください。
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出典・執筆:株式会社トライエッジ/中野 三四郎(代表取締役CEO)。 2024年4月8日公開/2026年8月14日更新。